月: 2022年11月

JG_延焼線緩和

2019年の延焼ラインの法改正で、建物が隣地境界線や隣棟間の中心線に正対していない場合には、その傾き度合いに応じて延焼範囲を計算によって設定できるようになりました。また、これまで無制限にかかっていた高さ方向の延焼範囲も、計算で求めた高さに抑えられるようになりました。つまり、火災の際の熱的な影響を勘案して延焼線の設定を合理的に算出できるようになったわけです。

実際にこの緩和計算を使ってシミュレーションしてみると、平面的な緩和効果はさほど大きくないものの、高さ方向の緩和については、建物が高層になればなるほど効果が大きくなることが分かります。告示の算定式をよくみると分かりますが、高さが低い側の建物高さに対して、概ね10m程度(*1)を上乗せした高さで延焼範囲がカットされます。低い側の建物が平屋建てであれば、4~5階以上で緩和の効果が得られます。

*1:固定値の5m(低い建物が5m以上の場合は10m)に離隔距離によって変動する5m前後を足した値。

緩和前と緩和後の延焼範囲のイメージ

JG_延焼線緩和は、隣棟間の延焼線を自動作成するJG_建物延焼線に、法改正による告示緩和機能を追加したもので、緩和後の延焼線や確認申請に使用する算定式を自動的に作成します。バージョン2.0からは高さ方向の緩和計算も自動化されました。

JG_延焼線緩和 告示1号(建築物相互間の延焼線)緩和 実行画面

JG_延焼線緩和 告示2号(隣地境界線等に生じる延焼線)緩和 実行画面

今回の緩和は、大きく告示1号と告示2号に分かれます。
告示1号は、敷地内の建築物相互の外壁間に生じる延焼ラインの緩和。告示2号は、隣地境界線、道路中心線に生じる延焼ラインの緩和です。

水平方向の緩和の算定式は、

1  階(d):max{2.5,3*(1ー0.000068*Θ ²)}・・・式1

2階以上(d):max{ 4 ,3*(1ー0.000068*Θ ²)}・・・式2

で表わされ、告示1も告示2も同様です。max(値1,値2,・・・)の数式の意味は、( )内で最大となる値を採用するという意味です。つまり、1階は2.5m、2階以上は4mが基準値でその値を下回ることはありません。

告示1号で、二つの建物が共に準耐火構造以上であれば、両方の建物に緩和を適用できます。告示の解説書などを見るとどちらかの建物を緩和対象の建物にし、どちらかを「他の建築物」として説明していますが、同時に一つの算定図で表現することも可能です。ただし、形状が複雑になると算定図が増え煩雑になるので、確認申請の際は別々に算定したほうが無難です。

JG_延焼線緩和 建物形状が複雑な場合(片側のみ算定した場合)(A図)

A図は、片側の建物形状に凹凸がある場合です。若干の凹凸でも外壁間中心線の折れ点は倍近くになり中心線の線分の数も増えます。この程度の建物形状であっても算定図が見づらくなってしまうため、建物ごとに作成したほうが見やすい算定図になります。因みに本ソフトでは、緩和算定は片側ずつ行えますが、延焼線は両方が描かれるため、A図は「他の建築物」の延焼線を消去して表示しています。また念のために言いますと、高さ方向の緩和算定は高い側の建物のみが適用になります。

JG_延焼線緩和 水平方向緩和計算 最小の角度を選択(B図)

本ソフトの算定図について少し説明します。隣地境界線等(外壁間中心線を含む)と建物外壁ラインとの交点は複数発生する場合が多いと思いますが、式1の角度Θは、隣地境界線等と建物外壁ラインのなす角度のうち最小のものが適用されます。B図の場合は27.5°(27.5°<62.5°)が最小となり、この最小角度の近傍に計算式を2段(上が1階、下が2階以上)で記載しています。もうひとつの中心線の場合も同様に最小となる17.5°(17.5°<72.5°)の近傍に2段で算定式を記載しています。

また、高さ方向の緩和を行う場合、算定式は、

h(B)が5m未満(h):h(B)+ 5+5√{1-(S/dfloor)² }・・・式3

h(B)が5m以上(h):h(B)+10+5√{1-(S/dfloor)² }・・・式4

で表わされ、水平方向の算定式の下に表示されます。ただし記載されるのは高さ緩和を行う建物のみです。ここでh(B)は低い側の建物高さを指し、Sは各中心線から建物までの最小距離(B図の場合は(S3)の4.371)、dfloorは式2で求めた2階以上の延焼距離(B図の場合は(d3)の4.743)を指します。

さて冒頭で、高さ方向の緩和に比べて水平方向の緩和が少ないと述べましたが、このことについて少し掘り下げたいと思います。式1の算定式:max{2.5,3*(1ー0.000068*Θ ²)}は、下限値の”2.5” と ”3*(1ー0.000068*Θ ²)” の計算結果のどちらか大きい値を採用しますので、角度がいくつになると下限値の”2.5” が採用になるか調べるために、3*(1ー0.000068*Θ ²)=2.5の式をΘに対して解いてみます。結果は、Θ=49.5°です。しかし、角度が49.5°になることが果たしてあるでしょうか?

水平方向の算定式に使用する角度Θの推移(C図)

角度Θは前述した通り、隣地境界線等と建物の外壁のなす角度の最小のものです。しかし、平面形が長方形の建物を計画している限り最大の角度が45°を超えることはありません(C図)。45°を算定式に代入すると2.589です。言い換えると、建物が一般的な矩形の場合、緩和値は下限値の2.5までは下がらず2.6程度で頭打ちになります。ちょっと残念な結果ですね。

また高さ方向の緩和で気をつけることがあります。B図を見るとわかりますが、高さ方向の緩和計算式にh2とh3の2種類があり、値も10.441(m)と10.753(m)と2つの値があります。入力値が異なるので当然ですが、実は高さ方向の緩和値は中心線の数だけ存在します。

冒頭で高さ方向の緩和による効果を表現した図を掲載しましたが、正確に表すと次のD図のようになります。

中心線によって異なる延焼範囲とその合成(D図)

延焼範囲の上端の位置に着目すると、範囲がずれていることが分かります。

実務に応用する場合、立面図に延焼範囲を投影して表現することになろうかと思いますが、A図のように中心線の数が多くなると作業がとても煩雑になります。その場合は、最大となる(h)の値で安全側で統一するというのも一つの方策かと思います。

JG_建物延焼線

JG_延焼線緩和 実行画面

JG_建物延焼線は、隣棟間の延焼ラインを自動で作成する外部変形(ソフト)です。このソフトは、告示緩和を取り入れた後身のJG_延焼線緩和に引き継いだため現在は配布していませんが、このスレッドでは、隣棟間の延焼線の基準となる外壁間中心線について、本ソフトでパラメーターを用いて作成する際の注意点についてお伝えしたい思います。

まず建物間中心線の描画を自動化することになった経緯について話したいと思います。

JG_延焼線緩和 外壁間の中心線

外壁間中心線の基本的な作図方法については、「防火避難安全規定の解説」に示されています。二棟の外壁面が正対している場合は、それぞれの外壁から等距離にある平行線を引き、正対していない場合は、向き合う外壁がつくる角度の二等分線をつくり、さらにそれらが交わるところで連結し、連続した折れ線にすれば完成します。しかし実際にはどうでしょうか。基本的な手順を理解していても、建物の形状が複雑になると二等分線が錯綜し、どの線をどの位置で連結すべきかあれこれ思考錯誤することになります。この複雑化した際の解法をプログラム化できないかと考えたのが本ソフトをつくったきっかけです。

プログラムの基本的な部分は単純で、建物どうしが向き合っている全ての面で二等分線(このソフトでは補助線といっています)を作成し、建物間の中央に位置する補助線どうしを見つけて繋いでいくという方法です。これは「総当たり」といって、解析する対象が膨大な場合は賢い方法ではありませんが、延焼線の作成であればデータ量は限定的で、取りこぼしがなく、全ての補助線を作成するので後で検証しやすいというメリットがあります。

JG_延焼線緩和 中心線の候補が1つの場合(A図)

JG_延焼線緩和 中心線の候補が2つの場合(B図)

A図は、補助線のなかから特定した中心線を赤の太線で表現したものです。複数の補助線の中から建物間の中央付近を通る部分を見つけ交点で繋いでいるのが分かると思います。これまで多くのシミュレーションを行いましたが、中心線は途切れることなく連続し、最低一本は見つけ出すことができます。ただ一本だけかというとそうではなく、建物どうしが離れている(延焼線の検討にはあまり影響がない)ところでは、中央の中心線とは連続しない別の中心線が現れる場合があります(B図)。

A図のように外壁面に凹凸がない場合は、互いに平行は補助線(図のピンク色の点線)が現れず、中心線は一組のみですが、B図になると外壁の面に凹凸があるため、互いに平行な補助線が複数現れ、このことから中心線が二組生まれてきます。

B図をみると、建物が離れているところで発生した中心線が、2番目の折れ線で建物の中央から明らかに逸脱し、途中で途切れていることが分かります。このように、周縁部で発生した中心線が最後まで連続することはほぼありません。その点では、延焼線作成に有効な中心線は一本のみであると言えます。

JG_延焼線緩和 補助線が複雑な場合1(C図)

C図においてはさらに外壁の面が増え補助線の数も増えてきていますが、建物間の中央を通り両端にかけて連続する中心線が一意に定まっています。次のD図においても、補助線が網目のように出現しかなり複雑な状況を呈していますが、この場合でも中心線が一意に定まっています。プログラムが、この数多い補助線群の中から建物間の中央を通る補助線をどのように見つけ出してているかについては後述しますが、補助線の総数は、二棟間で向き合う外壁面の数の掛け算(例:向き合う外壁面が3面ずつあると3×3=9本)になりますので、実務では外壁面がさらに複雑な場合もあると思います。

JG_延焼線緩和 補助線が複雑な場合2(D図)

このように補助線が複雑に入ってくると、中心線を絞り込むための条件をより詳細に設定する必要があります。本ソフトでは、形状が複雑な場合に使用するパラメーターを設けて、補助線の網の目の中から適切な中心線を選定しています。

この「形状が複雑な場合に使用するパラメーター」は以下の二つのパラメーターから選択できます(共に選択することも可能です)。

①中心線(補助線)の交点回りを詳細に解析する

②互いに連続しない中心線の候補を複数描画する

これらのパラメーターはそれぞれ目的と効果が異なります。①は、補助線の交点を繋げていく際に許容される交点間を短く設定するパラメーターで、補助線数が多いときに使用します。プログラムに常駐させなかった理由は、許容される交点間を短くすることで同一の交点が繰り返し選定され、途中で切断せざるを得なくなることが稀に発生するためです。ですので、通常の方法でうまくいかなかったときの代替案の作成用と考えて下さい。

JG_延焼線緩和 ①「中心線の交点回りを詳細に解析する」パラメーター不使用の例(E図)

JG_延焼線緩和 ①「中心線の交点回りを詳細に解析する」パラメーター使用の例(F図)

F図は、①「中心線の交点回りを詳細に解析する」パラメーターを使用した例です。使用していないE図と比較すると青丸部分の中心線のルートが異なっていて、E図よりもF図のほうがより建物間の中央に近いことが分かります。

②は、建物間の中央部を通る複数の補助線が近接する際に使用するパラメーターです。プログラム上の建物間の中央を、二棟間の最短距離となる線分(最短線分)の中点に設定しています(G図の青丸部分)。補助線どうしが近接している場合、極めて稀ですが、不適切は補助線のほうがその中点に近い場合があります。

JG_延焼線緩和 ②「特定された中心線の候補を複数描画する」パラメーター不使用の例(G図)

G図は②のパラメーターを使用しないで出力した場合です。一見大丈夫そうに見えますが、正しいのはその下の点線のラインです。青丸部分を拡大したH図をみると、点線のラインよりも太い実線ラインがほうが僅かに中点に近いため特定されたこと分かります。

JG_延焼線緩和 G図の青丸印部分を拡大したもの(H図)

次のJ図は、②「連続しない中心線の候補を複数描画する」パラメーターを使用した例です。最短線分の中点に近い中心線と次に近い中心線の二本が描画されています。こちらも①のパラメーターと同様に、通常の方法でうまくいかなかったときの代替案の作成用と考えて下さい。

JG_延焼線緩和 ②「連続しない中心線の候補を複数描画する」パラメーター使用の例(J図)