隣棟間の中心線をマニアックに解析
1. 建物間中心線の基本的な考え方
外壁間中心線の基本的な作図方法は、「防火避難安全規定の解説」に示されています。
基本的には、次のように作図します。
- 二棟の外壁面が正対している場合
→ それぞれの外壁から等距離にある平行線を引く - 二棟の外壁面が正対していない場合
→ 向き合う外壁がつくる角度の二等分線を作成する - 作成した線同士が交わる部分で連結する
- 最終的に、一連の折れ線として建物間中心線を作成する
一見すると単純な作業ですが、実際には建物の形状が複雑になるほど、作図は難しくなります。

2. 手作業での作図が難しくなる理由
建物の外壁が単純な形状であれば、中心線の作図は比較的容易です。
しかし、外壁に凹凸があったり、複雑な形状になったりすると、角度の二等分線が多数発生します。
その結果、どの線をどの位置で連結すべきか判断が難しくなります。
試行錯誤を重ねれば、最終的にそれらしい形にはできます。
しかし、作図の根拠を明確にしながら、安定して同じ結果を得ることは簡単ではありません。
3. プログラム化を考えたきっかけ
中心線の作図は、一見すると規則性がないように見えます。
しかし、最終的に作図できる以上、そこには何らかのメカニズムがあるはずです。
この考えが、建物間中心線の作成をプログラム化しようと思ったきっかけです。
プログラムでの基本的な考え方は、次のとおりです。
- 建物同士が向き合っているすべての外壁面を抽出する
- 各外壁面の組み合わせごとに、二等分線を作成する
※本ツールでは、この線を「補助線」と呼んでいます - 建物間の中央付近に位置する補助線を見つける
- 補助線同士の交点をつなぎ、連続した中心線を作成する
この方法はいわゆる「総当たり」に近い解析です。
解析対象が多くなるという欠点はありますが、取りこぼしが少なく、作成後の検証がしやすいというメリットがあります。

4. 中心線はどのように特定されるか
A図では、複数の補助線の中から、建物間中心線として特定された線を赤太線で表示しています。
プログラムでは、建物間の中央付近を通る補助線を見つけ、それらを交点で連結していきます。
さまざまな形状でシミュレーションした結果、建物間を最後まで途切れることなく連続する中心線を、少なくとも一本は見つけ出せることが分かりました。
ただし、常に一本だけに定まるわけではありません。
建物同士が離れていて、延焼線の検討にあまり影響しないような部分では、中央の中心線とは連続しない別の中心線が現れる場合があります。

5. 外壁形状と中心線の発生パターン
A図:外壁面に凹凸がない場合
A図のように外壁面に凹凸がない場合、中心線は一組のみ発生します。
このような形状では、補助線同士の関係も単純で、中心線を比較的安定して特定できます。
B図:外壁面に凹凸がある場合
B図のように外壁面に凹凸があると、互いに平行な補助線が複数発生します。
図中のピンク色の点線が、その補助線です。
このような場合、中心線が二組発生することがあります。
B図を見ると、最も外側で発生した中心線が、内側の「外壁間中心線2」において建物間の中央から明らかに外れ、途中で途切れていることが分かります。
ただし、多くの場合、このように周縁部で発生した中心線が最後まで連続することはありません。
その意味では、延焼線作成に有効な中心線は、実質的に一本であると考えられます。

6. 複雑な建物形状への対応
建物形状がさらに複雑になった場合でも、必ずしも中心線が不安定になるわけではありません。
C図の場合
C図では、外壁面の数が増え、それに伴って補助線の数も増えています。
それでも、建物間の中央を通り、両端に向かって連続する中心線が一意に定まっています。

D図の場合
D図では、補助線が網目状に発生し、より複雑な状態になっています。
それでも、この場合も中心線は一意に定まっています。

E図の場合
E図は、あえて壁面形状を複雑にしてプログラムを実行した例です。
補助線の総数は、二棟間で向き合う外壁面の数の掛け算になります。
例えば、向き合う外壁面がそれぞれ3面ずつある場合は、
- 3面 × 3面 = 9本
の補助線が発生します。
外壁面が多くなるほど補助線の数は急激に増えていきますが、この例でも連続する中心線を作成できています。

JG_延焼線緩和 中心線作成シミュレーション1(E図)
7. プログラム解析の限界
一方で、すべての形状に対して常に安定した中心線が得られるわけではありません。
F図の例を見てください。
F図は、E図ほど建物形状が複雑ではありません。
しかし、中心線が途中で途切れています。
その理由は、外壁面に凹部があることで、補助線のルートが円環状になりやすくなるためです。
さらに、同じ点に繰り返し戻ってくることで、無限ループに近い状態が発生する場合があります。
このような現象は、比較的整った凹部がある場合に偶発的に発生します。
総当たりの解析順序を逆にすることで解消する場合もありますが、それだけでは解決できないケースもあります。

8. 複雑形状に対応するためのパラメーター
単一の処理方法だけでは袋小路に入ってしまう場合、パラメーターを使って解析方法を切り替えることが有効です。
「JG_延焼線緩和」では、形状が複雑な場合に使用するパラメーターを設けています。
これにより、補助線が複雑に絡み合う状況にも対応しやすくしています。
改善が見られた主なパラメーターは、次の2つです。


9. パラメーター①
中心線(補助線)の交点回りを詳細に解析する
補助線同士の交点をつなげていく際、プログラムでは、交点から一定範囲内にある補助線について、一度選択したものを次に選択できないようにしています。
パラメーター①は、この判定範囲を狭めるための設定です。
H図は、パラメーター①「中心線の交点回りを詳細に解析する」を実行した例です。
オフの状態であるG図と比較すると、青丸部分の中心線のルートが異なっています。
H図の中心線の方が、より建物間の中央に近い位置を通っていることが分かります。
ただし、このパラメーターは通常はオフで使用します。
判定範囲を狭めすぎると、F図のように中心線が途中で途切れるリスクが高くなるためです。
10. パラメーター②
互いに連続しない中心線の候補を複数描画する
プログラムでは、建物間の中央位置を、二棟間の最短線分の中点として定義しています。
ただし、この中点を補助線が正確に通ることは多くありません。
そのため、通常は中点に最も近い補助線を採用します。
パラメーター②は、最も近い補助線に加えて、次に近い補助線も採用する設定です。
その結果、中心線の候補が2本描画されます。

J図は、パラメーター②をオフにして実行した例です。
青丸部分を拡大したK図を見ると、点線のラインよりも太い実線ラインの方が、わずかに中点に近いため、中心線として特定されています。

パラメーター②をオンにすると、この点線のラインも候補として含めます。
L図は、パラメーター②「互いに連続しない中心線を複数描画する」をオンにして実行した例です。
最短線分の中点に近い中心線に加えて、次に近い中心線が代替案として描画されています。
この2本のうち1本は誤った中心線ですが、もう1本は正確に描画できています。
このうちのどちらを選択するかは直感的に明らかです。
ただしプログラムで特定することは未だできていません。

✅ まとめ
建物間中心線の作図は、基本的なルール自体は単純です。
しかし、建物形状が複雑になると、補助線が多数発生し、どの線を連結すべきかの判断が難しくなります。
「JG_延焼線緩和」では、総当たりによる補助線解析を基本としながら、複雑な形状に対応するためのパラメーターを用意しています。
これにより、多くのケースで中心線を自動作成できますが、形状によっては複数の候補が発生したり、中心線が途中で途切れたりする場合があります。
そのため、プログラムによる自動解析は有効な手段である一方、最終的には図面上で結果を確認し、必要に応じて調整することが重要です。
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