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JG_延焼線緩和

2019年の延焼ラインの法改正で、建物が隣地境界線や隣棟間の中心線に正対していない場合には、その傾き度合いに応じて延焼範囲を計算によって設定できるようになりました。また、これまで無制限にかかっていた高さ方向の延焼範囲も、計算で求めた高さに抑えられるようになりました。つまり、火災の際の熱的な影響を勘案して延焼線の設定を合理的に算出できるようになったわけです。

実際にこの緩和計算を使ってシミュレーションしてみると、平面的な緩和効果はさほど大きくないものの、高さ方向の緩和については、建物が高層になればなるほど効果が大きくなることが分かります。告示の算定式をよくみると分かりますが、高さが低い側の建物高さに対して、概ね10m程度(*1)を上乗せした高さで延焼範囲がカットされます。低い側の建物が平屋建てであれば、4~5階以上で緩和の効果が得られます。

*1:固定値の5m(低い建物が5m以上の場合は10m)に離隔距離によって変動する5m前後を足した値。

緩和前と緩和後の延焼範囲のイメージ

JG_延焼線緩和は、隣棟間の延焼線を自動作成するJG_建物延焼線に、法改正による告示緩和機能を追加したもので、緩和後の延焼線や確認申請に使用する算定式を自動的に作成します。バージョン2.0からは高さ方向の緩和計算も自動化されました。

JG_延焼線緩和 告示1号(建築物相互間の延焼線)緩和 実行画面

JG_延焼線緩和 告示2号(隣地境界線等に生じる延焼線)緩和 実行画面

今回の緩和は、大きく告示1号と告示2号に分かれます。
告示1号は、敷地内の建築物相互の外壁間に生じる延焼ラインの緩和。告示2号は、隣地境界線、道路中心線に生じる延焼ラインの緩和です。

水平方向の緩和の算定式は、

1  階(d):max{2.5,3*(1ー0.000068*Θ ²)}・・・式1

2階以上(d):max{ 4 ,3*(1ー0.000068*Θ ²)}・・・式2

で表わされ、告示1も告示2も同様です。max(値1,値2,・・・)の数式の意味は、( )内で最大となる値を採用するという意味です。つまり、1階は2.5m、2階以上は4mが基準値でその値を下回ることはありません。

告示1号で、二つの建物が共に準耐火構造以上であれば、両方の建物に緩和を適用できます。告示の解説書などを見るとどちらかの建物を緩和対象の建物にし、どちらかを「他の建築物」として説明していますが、同時に一つの算定図で表現することも可能です。ただし、形状が複雑になると算定図が増え煩雑になるので、確認申請の際は別々に算定したほうが無難です。

JG_延焼線緩和 建物形状が複雑な場合(片側のみ算定した場合)(A図)

A図は、片側の建物形状に凹凸がある場合です。若干の凹凸でも外壁間中心線の折れ点は倍近くになり中心線の線分の数も増えます。この程度の建物形状であっても算定図が見づらくなってしまうため、建物ごとに作成したほうが見やすい算定図になります。因みに本ソフトでは、緩和算定は片側ずつ行えますが、延焼線は両方が描かれるため、A図は「他の建築物」の延焼線を消去して表示しています。また念のために言いますと、高さ方向の緩和算定は高い側の建物のみが適用になります。

JG_延焼線緩和 水平方向緩和計算 最小の角度を選択(B図)

本ソフトの算定図について少し説明します。隣地境界線等(外壁間中心線を含む)と建物外壁ラインとの交点は複数発生する場合が多いと思いますが、式1の角度Θは、隣地境界線等と建物外壁ラインのなす角度のうち最小のものが適用されます。B図の場合は27.5°(27.5°<62.5°)が最小となり、この最小角度の近傍に計算式を2段(上が1階、下が2階以上)で記載しています。もうひとつの中心線の場合も同様に最小となる17.5°(17.5°<72.5°)の近傍に2段で算定式を記載しています。

また、高さ方向の緩和を行う場合、算定式は、

h(B)が5m未満(h):h(B)+ 5+5√{1-(S/dfloor)² }・・・式3

h(B)が5m以上(h):h(B)+10+5√{1-(S/dfloor)² }・・・式4

で表わされ、水平方向の算定式の下に表示されます。ただし記載されるのは高さ緩和を行う建物のみです。ここでh(B)は低い側の建物高さを指し、Sは各中心線から建物までの最小距離(B図の場合は(S3)の4.371)、dfloorは式2で求めた2階以上の延焼距離(B図の場合は(d3)の4.743)を指します。

さて冒頭で、高さ方向の緩和に比べて水平方向の緩和が少ないと述べましたが、このことについて少し掘り下げたいと思います。式1の算定式:max{2.5,3*(1ー0.000068*Θ ²)}は、下限値の”2.5” と ”3*(1ー0.000068*Θ ²)” の計算結果のどちらか大きい値を採用しますので、角度がいくつになると下限値の”2.5” が採用になるか調べるために、3*(1ー0.000068*Θ ²)=2.5の式をΘに対して解いてみます。結果は、Θ=49.5°です。しかし、角度が49.5°になることが果たしてあるでしょうか?

水平方向の算定式に使用する角度Θの推移(C図)

角度Θは前述した通り、隣地境界線等と建物の外壁のなす角度の最小のものです。しかし、平面形が長方形の建物を計画している限り最大の角度が45°を超えることはありません(C図)。45°を算定式に代入すると2.589です。言い換えると、建物が一般的な矩形の場合、緩和値は下限値の2.5までは下がらず2.6程度で頭打ちになります。ちょっと残念な結果ですね。

また高さ方向の緩和で気をつけることがあります。B図を見るとわかりますが、高さ方向の緩和計算式にh2とh3の2種類があり、値も10.441(m)と10.753(m)と2つの値があります。入力値が異なるので当然ですが、実は高さ方向の緩和値は中心線の数だけ存在します。

冒頭で高さ方向の緩和による効果を表現した図を掲載しましたが、正確に表すと次のD図のようになります。

中心線によって異なる延焼範囲とその合成(D図)

延焼範囲の上端の位置に着目すると、範囲がずれていることが分かります。

実務に応用する場合、立面図に延焼範囲を投影して表現することになろうかと思いますが、A図のように中心線の数が多くなると作業がとても煩雑になります。その場合は、最大となる(h)の値で安全側で統一するというのも一つの方策かと思います。

JG_建物延焼線

JG_延焼線緩和 実行画面

JG_建物延焼線は、隣棟間の延焼ラインを自動で作成する外部変形(ソフト)です。このソフトは、告示緩和を取り入れた後身のJG_延焼線緩和に引き継いだため現在は配布していませんが、このスレッドでは、隣棟間の延焼線の基準となる外壁間中心線について、本ソフトでパラメーターを用いて作成する際の注意点についてお伝えしたい思います。

まず建物間中心線の描画を自動化することになった経緯について話したいと思います。

JG_延焼線緩和 外壁間の中心線

外壁間中心線の基本的な作図方法については、「防火避難安全規定の解説」に示されています。二棟の外壁面が正対している場合は、それぞれの外壁から等距離にある平行線を引き、正対していない場合は、向き合う外壁がつくる角度の二等分線をつくり、さらにそれらが交わるところで連結し、連続した折れ線にすれば完成します。しかし実際にはどうでしょうか。基本的な手順を理解していても、建物の形状が複雑になると二等分線が錯綜し、どの線をどの位置で連結すべきかあれこれ思考錯誤することになります。この複雑化した際の解法をプログラム化できないかと考えたのが本ソフトをつくったきっかけです。

プログラムの基本的な部分は単純で、建物どうしが向き合っている全ての面で二等分線(このソフトでは補助線といっています)を作成し、建物間の中央に位置する補助線どうしを見つけて繋いでいくという方法です。これは「総当たり」といって、解析する対象が膨大な場合は賢い方法ではありませんが、延焼線の作成であればデータ量は限定的で、取りこぼしがなく、全ての補助線を作成するので後で検証しやすいというメリットがあります。

JG_延焼線緩和 中心線の候補が1つの場合(A図)

JG_延焼線緩和 中心線の候補が2つの場合(B図)

A図は、補助線のなかから特定した中心線を赤の太線で表現したものです。複数の補助線の中から建物間の中央付近を通る部分を見つけ交点で繋いでいるのが分かると思います。これまで多くのシミュレーションを行いましたが、中心線は途切れることなく連続し、最低一本は見つけ出すことができます。ただ一本だけかというとそうではなく、建物どうしが離れている(延焼線の検討にはあまり影響がない)ところでは、中央の中心線とは連続しない別の中心線が現れる場合があります(B図)。

A図のように外壁面に凹凸がない場合は、互いに平行は補助線(図のピンク色の点線)が現れず、中心線は一組のみですが、B図になると外壁の面に凹凸があるため、互いに平行な補助線が複数現れ、このことから中心線が二組生まれてきます。

B図をみると、建物が離れているところで発生した中心線が、2番目の折れ線で建物の中央から明らかに逸脱し、途中で途切れていることが分かります。このように、周縁部で発生した中心線が最後まで連続することはほぼありません。その点では、延焼線作成に有効な中心線は一本のみであると言えます。

JG_延焼線緩和 補助線が複雑な場合1(C図)

C図においてはさらに外壁の面が増え補助線の数も増えてきていますが、建物間の中央を通り両端にかけて連続する中心線が一意に定まっています。次のD図においても、補助線が網目のように出現しかなり複雑な状況を呈していますが、この場合でも中心線が一意に定まっています。プログラムが、この数多い補助線群の中から建物間の中央を通る補助線をどのように見つけ出してているかについては後述しますが、補助線の総数は、二棟間で向き合う外壁面の数の掛け算(例:向き合う外壁面が3面ずつあると3×3=9本)になりますので、実務では外壁面がさらに複雑な場合もあると思います。

JG_延焼線緩和 補助線が複雑な場合2(D図)

このように補助線が複雑に入ってくると、中心線を絞り込むための条件をより詳細に設定する必要があります。本ソフトでは、形状が複雑な場合に使用するパラメーターを設けて、補助線の網の目の中から適切な中心線を選定しています。

この「形状が複雑な場合に使用するパラメーター」は以下の二つのパラメーターから選択できます(共に選択することも可能です)。

①中心線(補助線)の交点回りを詳細に解析する

②互いに連続しない中心線の候補を複数描画する

これらのパラメーターはそれぞれ目的と効果が異なります。①は、補助線の交点を繋げていく際に許容される交点間を短く設定するパラメーターで、補助線数が多いときに使用します。プログラムに常駐させなかった理由は、許容される交点間を短くすることで同一の交点が繰り返し選定され、途中で切断せざるを得なくなることが稀に発生するためです。ですので、通常の方法でうまくいかなかったときの代替案の作成用と考えて下さい。

JG_延焼線緩和 ①「中心線の交点回りを詳細に解析する」パラメーター不使用の例(E図)

JG_延焼線緩和 ①「中心線の交点回りを詳細に解析する」パラメーター使用の例(F図)

F図は、①「中心線の交点回りを詳細に解析する」パラメーターを使用した例です。使用していないE図と比較すると青丸部分の中心線のルートが異なっていて、E図よりもF図のほうがより建物間の中央に近いことが分かります。

②は、建物間の中央部を通る複数の補助線が近接する際に使用するパラメーターです。プログラム上の建物間の中央を、二棟間の最短距離となる線分(最短線分)の中点に設定しています(G図の青丸部分)。補助線どうしが近接している場合、極めて稀ですが、不適切は補助線のほうがその中点に近い場合があります。

JG_延焼線緩和 ②「特定された中心線の候補を複数描画する」パラメーター不使用の例(G図)

G図は②のパラメーターを使用しないで出力した場合です。一見大丈夫そうに見えますが、正しいのはその下の点線のラインです。青丸部分を拡大したH図をみると、点線のラインよりも太い実線ラインがほうが僅かに中点に近いため特定されたこと分かります。

JG_延焼線緩和 G図の青丸印部分を拡大したもの(H図)

次のJ図は、②「連続しない中心線の候補を複数描画する」パラメーターを使用した例です。最短線分の中点に近い中心線と次に近い中心線の二本が描画されています。こちらも①のパラメーターと同様に、通常の方法でうまくいかなかったときの代替案の作成用と考えて下さい。

JG_延焼線緩和 ②「連続しない中心線の候補を複数描画する」パラメーター使用の例(J図)

JG_日影測定線

JG_日影測定線 閉鎖測定線 実行画面

日影図を作成する際に測定線の記入が必要になりますが、JG_日影測定線は、その測定線を自動で描画する外部変形(ソフト)です。測定線は道路側に対して緩和規定があり、一般的に閉鎖方式と発散方式が用いられます。このソフトでは、そのどちらかを選んで描画できます。

JG_日影測定線 発散測定線 実行画面

測定線は、敷地形状や道路線形が複雑になると、建築基準法の解釈上の問題が浮上し特定行政庁に確認する必要にせまられますが、なかでも発散方式は、採用することに慎重な自治体があり、採用する場合でも細かな規制を付加されることがあります。この発散方式については、このスレットの最後で、利用する際の注意点等についてふれます。

まずは、一般的な閉鎖測定線の作成プロセスをおさらいしましょう。

測定線は敷地境界線に対して外側に5mまたは10m離れた点を結んだ線です。境界線が凸角になったり凹角になると迷いがちですが、境界線に沿って5mまたは10mの円を転がしたときの軌跡をイメージすると分かりやすくなります。

この考え方を基本にすると、測定線は常に連続した閉じた領域をつくります。

少し特殊な例をみていきましょう。

次の図は、敷地境界線の折れ点がジグザク状に連続する場合の5mと10mの測定線です。このように入隅と出隅が交互に現れると大小の円弧が連続することになります。

JG_日影測定線 ジグザグ状の境界線と5m及び10m測定線

次の図は凹地部分の測定線を示しています。この図のように円弧がクロスする場合、クロスした点から内側にある軌跡は消去されます。

凹地部分の測定線1:円弧どうしがクロスする場合(イ図)

円弧と直線がクロスする場合も同様に内側にある軌跡は消去されます。

凹地部分の測定線2:円弧と直線がクロスする場合(ロ図)

さて、道路側の緩和を用いた測定線は、道路形状が複雑になると、法令の解釈のしかたで位置や形状が異なる場合があります。JG_日影測定線は、自治体の指導内容に関する解説書や質疑応答集などを参考にアルゴリズムを構築し、それによって測定線の位置と形状を算出しています。いくつかの特徴的な解法例を紹介します。

一般的な道路幅員の取り方

まず基本となる道路幅員の取り方ですが、敷地境界線や道路中心線(二等分線)に対して垂線を引くのではなく、道路の反対側の境界線に対して垂線を引いて測ります。

道路幅員が10m未満の「みなし境界線」(A図)

この道路幅員の取り方を原則として、道路の反対側の境界線が敷地境界線と平行ではない場合の解法をみていきましょう。まず最低2カ所の幅員をもとめ、それぞれの中点を結んで道路中心線を定めます。道路幅員が10m未満の場合は、この道路中心線が「みなし境界線」となります。(A図)。

道路幅員が10m以上の場合の「みなし境界線」(B図)

次に、道路幅員が徐々に広がっていき一部が10m以上になるとどうでしょうか。5m測定線は反対側の道路境界線になり、その境界線から5m敷地側にセットバックしたラインが「みなし境界線」となります。したがって、みなし境界線は、幅員が10m未満までは道路中心線に重なりますが、10m以上になる位置で道路中心線から敷地の反対側に乖離していきます。

B図を見ると分かりますが、幅員が10mの位置で反対側の境界線から垂直に下した線(ここでは幅員線と呼びます)の中点と、みなし境界線が枝分かれする点(◎の位置)が一致しています。このことからも、道路幅員は反対側の境界線に垂直にとることが合理的だと言えます。

道路の反対側の境界線が「へ」の字の場合の解法1(C図)

C図は、反対側の境界線が「へ」の字になった場合で、敷地の反対側に「へ」の字の山側が向いている場合です。この場合、みなし境界線の交点は、幅員を敷地境界線に垂直にとった場合よりも、やや敷地側に入ります。つまり安全側になります。

道路の反対側の境界線が「へ」の字の場合の解法2(D図)

「へ」の字が逆になった場合も同様にみなし境界線の交点はやや敷地側に入り、この場合も安全側になります(D図)。

JG_日影測定線 道路と敷地境界線が共に「へ」の字の場合の「みなし境界線」(E図)

E図は、反対側の道路境界線と敷地境界線が共に「へ」の字の場合について、本ソフトで描画した「みなし敷地境界線」と5m、10mの測定線です。この場合でも「みなし境界線」が一意に定まります。

JG_日影測定線 反対側の道路境界線の折れ点が敷地境界線より多い場合の「みなし境界線」(F図)

F 図は、反対側の道路境界線の折れ点が敷地境界線の折れ点より多い場合です。この場合でも、みなし境界線は一意に定まります。ただし、反対側の境界線がどちらの敷地境界線に属すのかプログラムでは判断がつかないため、次のようにソフトの入力画面で選択する必要があります。

JG_日影測定線 反対側の道路境界線入力画面(ハ図)

逆に敷地側の折れ点が多い場合でも、同様にソフトの入力画面で、反対側の道路境界線と敷地側境界線の組み合わせを決める必要があります。

JG_日影測定線 反対側の道路境界線入力画面2(二図)

互いに向かい合う部分の比率が多いほうを選択するとよいでしょう。

JG_日影測定線 Jw_CAD上の閉鎖測定線の描画 実行画面

さらに、みなし境界線の位置を特定しづらい事例をみていきましょう。

反対側の境界線の一部が敷地境界線に対して直角に近い場合(G図)

G図は、先の図のように反対側の境界線の折れ点が複数あり、その境界線の一部が敷地境界線に対して直角に近く、そのため道路幅員が著しく長くなって10mを超えるような場合です。この場合みなし境界線の位置は、道路中心線ではなく反対側の境界線から5mの位置になります。なぜなら道路幅員が10m以上の場合、5m測定線は反対側の境界線に一致し、それから5m返った位置が「みなし境界線」になるからです(B図参照)。しかしながらこの5m測定線は、出隅の円弧を作成する過程で消去されます(ロ図参照)。法令で5m測定線は反対側の道路境界線に一致するとされているものの、結果だけみると反対側の境界線は測定線になりません(G図で「見かけの5m測定線」としているのはこのためです)。10m測定線も同様にプログラム的にはいったん作成されるもののその後のプロセスで消去されます(G図「見かけの10m測定線」)。道路においては出隅を円弧で処理しない解法もありますが、このソフトにおいては、出隅部の測定線は常に円弧で処理されます。

幅員の異なる道路が雁行する場合の「みなし境界線」と測定線1(H図)

H図は、G図の敷地境界線に対しやや直角に近かった反対側の境界線が完全に垂直になった(「かぎ型」になった)場合です。この垂直部分の幅員は、G図と考え方は同じで幅員が10mを超える(プログラム的には無限大として扱います)ため、境界線から5mセットバックした位置をみなし境界線とします。そしてG図と同様に、敷地境界線に垂直な反対側の境界線は出隅を円弧にする過程で消去されて測定線になりません。しかし、この雁行する道路については、次の図のような解法も存在します(本ソフトの解法とは異なるので注意して下さい)。

幅員の異なる道路が雁行する場合の「みなし境界線」と測定線2(I図)

この図は一般的には、「幅員の異なる道路が雁行する場合のみなし境界線の位置」として行政の手引書などに登場するものです。

この手引きの解法では、幅員が切り替わる位置が「みなし境界線」になります。出隅部も円弧として処理されません。しかしながらこの考え方は、反対側の境界線の一部が敷地境界線に対して垂直な場合のみ有効です。なぜなら、傾きが生じるとG図のように敷地との間に幅員ができて第三の道路が生じてしまうからです。

さて、この雁行する道路の対岸に敷地がある場合、つまり雁行する道路の頂点が敷地側にある場合はどうでしょうか。

敷地境界線の一部が道路の反対側のラインに対して直角に近い場合(J図)

J 図は、先ほどと同じややくずれた「かぎ型」の境界線です(図の下が北側だと考えてください)。本ソフトでは、この場合も反対側の道路境界線に垂直に引いた幅員線の中点をつないで「みなし境界線」とします。

敷地境界線の一部が道路の反対側のラインに対して垂直な場合(k図)

J図の道路が完全な「かぎ型」になったK図においても、J図の中央の道路が閉じるかたちで「みなし境界線」が設定されます。すると今度は、道路幅員が切り替わる位置が「みなし境界線」になります。ただし測定線はあくまで、出隅部に円弧をともなって生成されます。

以上のようにこのソフトにおいて「みなし境界線」は、特殊な解法を用いることなく、道路幅員の単純な設定方法と、幅員が10m以上の場合の緩和規定を用いることで一意的に決まります。また、5mと10mの測定線は、常に出隅部を円弧にするかたちで描画されます。

一方で本ソフトには、異なる二つの解法のうちどちらかを選択できるものがあります。敷地境界線と道路の「みなし境界線」の結合部の扱い方についてです。

敷地の境界線と道路の「みなし境界線」の結合方法1(L図)

L図は、自治体が配布している手引書に書かれていることが多い解法で、敷地境界線を道路のみなし境界線まで延長して閉じた領域をつくる方法です。

敷地の境界線と道路の「みなし境界線」の結合方法2(M図)

M図は、逆日影ソフトなどで採用していることが多い解法で、道路に垂直な「みなし境界線」を介して相互に結節して閉じた領域をつくる方法です。このソフト(Ver.1.1以降)では上記のどちらかを選択できます。

敷地の境界線と道路の「みなし境界線」の結合方法3(N図)

ここでひとつ問題提起したいと思います。

例えばN図ように短い線で斜めに道路と接する場合(東側または西側が隣地の私道に接していて道路側に隅切があるような場合)です。このような場合でも内側に転んだ短い線をみなし境界線まで延長して閉じた領域をつくるとなると、N図のように著しく不利な状況が発生します。ただこのような場合、発散方式という選択肢がまだ残されています。

発散方式の解法については、東京都安全条例の解説または特定行政庁の指導内容をまとめた冊子にその説明がありますが、道路形状が複雑な場合(道路が雁行していたり屈曲している場合)や交差点になっている場合の考え方についてはほとんど触れられていません。そのせいか様々な解法が巷では用いられています。いくつか特徴的なものを紹介しますが、一つ覚えておくとよいポイントがあります。

道路内に測定線をつくらない発散方式の特徴

発散方式で測定線を描画すると道路幅員が10m未満であっても道路内に測定線が発生しません。東京都安全条例の解説にもありますが、発散方式は道路内をすべて緩和することを前提としているという見方です。このことを踏まえて次の図をみてください。

屈折道路の場合の発散測定線(P図)

前面道路が屈折する場合の発散方式による解法です。この場合二通りの解法が考えられます。一つは、発散方式で作成した測定線を相互に交わらせる方法、もう一つは、屈折部に閉鎖方式を採用して円弧にする方法です。P図をよくみると分かりますが、閉鎖方式を採用すると道路内に測定線の一部がかかります。道路内に測定線をつくらない発散方式の特徴から判断すると、発散測定線を相互に交わらせるのが正解であるように思います。しかし実務では、この種の日影図をほとんど見かけません。むしろ閉鎖方式で作成されることが多いでしょう。安全側を採用しておけばNGにならいため理に適ってはいますが・・・

敷地境界線に直交する道路がある場合の発散測定線(Q図)

次に、Q図のように前面道路に直交する道路がある場合(T字型道路に接する場合)です。この場合、直交する道路の幅員を測るべきポイントを敷地境界線上に特定することが困難です。道路内に測定線が生まれないのが発散方式の特徴であるとすれば、道路内を無制限に緩和しても差し支えないように思いますが、しかしながら、みなし境界線を引く手段がなく、みなし境界線が無い以上は法令による緩和規定を準用できません。直交道路が敷地の端部にあってT字路や十字路を形成する場合は、敷地の端部から幅員線を放射状に引いて「みなし境界線」を求めることができますが(またその例を見かけますが)、T字型道路に接する場合の一般な解法とすることはできません。一方で敷地に直交する道路がある場合、道路斜線制限などでは街区を整えるため「みなし道路境界線」を敷地の反対側に設定します(ℚ図)。これを準用すると、測定線は直交道路で分断されずに連続することになります。個人的にはこちらのほうがしっくりいくように思います。

道路内でも規制がかかる場合がある発散方式(R図)

また、行政庁によっては、先のL図のように敷地境界線が道路に対して鈍角に取り合う場合、R図のように道路内であっても敷地の測定線が延伸するとみなされます。これは発散方向の無制限の緩和をある程度抑止する考え方です。

これらのことから発散方式の採用は、あまり複雑ではない道路形状と敷地との関係に限定するのが無難であると思われます。

本ソフトの現バージョンにおいては、前面道路が「一の道路」(屈折や交差がない道路)である場合にのみ発散方式による描画が可能です。

ソフトの操作方法は、以下の通りです。

【1】zipファイルを解凍し、JWWファイル内または任意の場所に保管する。

【2】Jw_cadの[その他]メニュから外部変形コマンドを選択する。

【3】ファイル選択で、保管した場所にあるJG_日影測定線フォルダ内の日影測定線.BATをクリックする。

【4】Jw_cadの左上に表示されるメニュー「閉鎖測定線」「発散測定線」「各種注釈」から実行する作業を選択する。
    
 ≪ A 閉鎖測定線 ≫

【5】敷地境界線と道路を示す図形を全て選択し、「選択確定」ボタンを押す。

JG_日影測定線 敷地入力フォーム

【6】敷地境界線入力フォームに選択した敷地地境界線と道路が表示されるので、敷地境界点を時計回りで順にクリックし、全ての境界点のクリックが終わったら「入力(次へ)」ボタンを押す。(反時計回りで入力するとエラーとなるので、その際は、「取消」ボタンを押し再度入力する。)直前のデータを利用する場合は、「直前を再現」ボタンを押す。 

JG_日影測定線_境界線種別入力フォーム

【7】「境界種別を選択します(以下省略)」というメッセージが現れ、境界種別入力フォームが立ち上がる。右上の境界線リストから境界線番号を選択(複数選択可)し、リスト下の境界種別「道路境界線」、「隅切」、「隣地境界線」の3つから1つを選択し「決定」ボタンを押す。未入力の場合は隣地境界線となるので、隣地境界線の入力は省略できる。変更する場合は、リストを選択し、変更する境界種別を選び、「決定」ボタンを押す。道路と隅切が全て入力し終わったら「次へ」ボタンを押す。直前のデータを利用する場合は、「直前を再現」ボタンを押す。 

JG_日影測定線_反対側の道路境界線入力フォーム

【8】「リストから道路境界線を選択し(以下省略)」というメッセージが現れ、反対側道路境界線入力フォームが立ち上がる。右上の境界線リストから該当する道路境界線番号を選択し、反対側の道路境界線を時計回りで2点クリックし「入力」ボタンを押す。(反時計回りでクリックした際はエラーとなるので、その際は、「取消」ボタンを押し再度入力する。)入力するとライン上に境界線番号が表示される。異なった番号が入った場合は「削除」ボタンを押し再度入力する。また、【7】で隣地境界線を選択した場合でもこのフォームで道路境界線に変更できる。全て道路境界線の入力が終わったら「入力完了」ボタンを押す。直前のデータを利用する場合は、「直前を再現」ボタンを押す。

JG_日影測定線_反対側の道路境界線入力フォーム(反対側の道路が重複する場合)

 注意:複数の敷地境界線が反対側の道路境界線を共有する場合は、一つの道路境界線に複数の番号が記載されます(ハ図も参照)。逆に、一つの道路に敷地境界線が複数対応する場合は、同一の番号が反対側の道路境界線にそれぞれ入力されます(二図参照)。

JG_日影測定線_行き止まり道路の入力(みなし道路境界線の入力)(a図)

補足:行き止まり道路がある場合は、道路幅員と同じ距離の位置にある線分を道路境界線とみなして入力して下さい(事前にJw_CADで線分を作成しておく必要があります)(a図)。また、行き止まり道路が敷地に入り込む場合は、対岸にある敷地の一辺が反対側の道路境界線となることがありますが、その場合でも入力が必要です(b図)。 

JG_日影測定線_行き止まり道路の入力(対岸にある自身の境界線を道路境界線として入力)(b図)

【9】描画設定入力フォームが立ち上がる。記載設定から、「みなし境界線を記載」、「道路中心線を記載」、「道路幅員を記載」、「離隔距離を記載」を行うか選択する。次に、レイヤグループ、レイヤ、線(色)番号、使用する文字種を入力する。次に、隣地境界線と道路みなし境界線の結合方法を、「隣地みなし境界線を延長して結合する」か、「道路に直角なラインを介して結合する」か選択する。

 

JG_日影測定線_閉鎖線描画設定

【10】「完了」ボタンを押すと、Jw_cadの画面に閉鎖測定線その他が出力される。

 ≪ B 発散測定線 ≫

【5】~【9】  ≪ A ≫ の行程に同じ。

【10】「完了」ボタンを押すと、Jw_cadの画面に発散測定線と閉鎖測定線(隣地側)その他が出力される。

 注意:発散測定線が描画されるのは放物線が連続する道路上のみです。行き止まり道路は隣地と同様に閉鎖測定線となります。敷地反対側の道路境界線が敷地に対して延びていないと、行き止まり道路として扱われるので注意して下さい。道路が途中で屈曲する場合の判断は、円弧で閉じるか放物線のままとするか解釈が分かれますが、このソフトでは円弧で閉じない描画となります。つまり、反対側の道路境界線を開放すると放物線を描画し、閉鎖すると行き止まり道路と同じ扱いになります。

 ≪ C 各種注釈 ≫

【5】~【8】  ≪ A ≫ の行程に同じ。

【9】描画設定入力フォームが立ち上がる。道路情報の記載設定から、「境界線延長を記載」、「道路中心線を記載」、「道路幅員を記載」、「敷地面積を記載」、「敷地境界点を記載」を行うか選択する。また、レイヤグループ、レイヤ、線(色)番号、使用する文字種を入力する。

JG_日影測定線_各種注釈 実行画面

【10】「完了」ボタンを押すと、Jw_CADの画面に各種注釈が出力される。

補足: ≪ A ≫ ~ ≪ C ≫ の行程は共に同じ敷地情報を使用します。どちらかで入力したデータは本ソフト内に記録されるので、「直前を再現」ボタンを使用することで、二度入力する手間を省くことが出来ます。また、【8】の入力の最後に「Excel書出し」ボタンを使用すると、任意のエクセルシートにデータを保存することができ、「JG_延焼線作成」「JG_近隣範囲図」「JG_壁面線後退」等の他の外部変形ソフトに使用できます。