AutoCADプラグイン入門

AutoCAD 2027 / PLUGIN BASICS

AutoCADプラグインとは何か

コマンドを 1 つ増やす、という考え方 ── できること・他の方法との違い・導入のしかた

プラグインとは、AutoCAD の中に読み込まれて動くプログラムです。使う側から見れば、話はもっと簡単で、コマンドが 1 つ増えるだけ。LINETRIM と同じように名前を打てば動きます。新しいアプリを立ち上げるわけでも、図面を書き出すわけでもありません。

AutoCAD には、はじめから膨大なコマンドが備わっています。しかし「うちの仕事で毎回やること」までは入っていません。求積表を作る、平均地盤面を算定する、採光補正係数の目盛を引く——どれも AutoCAD にコマンドはありませんが、線を引き、数値を計算し、文字を書く作業の組み合わせでできています。

その組み合わせをプログラムに任せ、コマンド 1 つに畳んでしまうのがプラグインです。

POINT 01

覚えるのはコマンド名だけ

アプリの切り替えも、ファイルの受け渡しもありません。コマンドラインに打つ——それだけで、いつもの操作の続きとして使えます。

POINT 02

図面から拾って、図面へ返す

画面で指示した点や、選択した線・ポリラインをそのまま読み取ります。数値を書き写す手間も、写し間違いもありません。

POINT 03

入れるのも外すのもフォルダー 1 つ

決められた場所へフォルダーをコピーするだけで入ります。外すときは削除するだけ。管理者権限もレジストリの変更も要りません。

どこで動くかによって、できることが変わります

AutoCAD を自動化する方法はプラグインだけではありません。AutoLISPActiveX(COM)スクリプト——名前を聞いたことがある方も多いと思います。

これらの違いは、突き詰めると「プログラムがどこで動いているか」の一点です。AutoCAD と同じプロセスの中にいるのか、外にいるのか。それによって、図面への届き方も、できることも変わります。

下の図で切り替えてみてください。いちばん右の「ADA のプラグイン」が、当サイトで配布しているものの構成です。

プログラムはどこで動くのかボタンで方式を切り替えられます
AutoCAD のプロセス 図面(DWG) 中で動くプログラム 外で動くプログラム データの流れ
方式

方式ごとの性格

動く場所
読み込み方
図面への届き方
AutoCAD LT

AutoLISP ── 手軽さが持ち味

AutoCAD に古くから備わっている言語です。テキストファイル(.lsp)に書いて APPLOAD で読み込めば、その場で使えます。書き換えて読み直せばすぐ試せる手軽さが最大の利点で、社内に代々受け継がれている定型処理は、たいていこの形で残っています。

一方で、基本の考え方は「AutoCAD のコマンドを順番に呼ぶ」ことです。込み入った計算や、大きな入力画面、Excel との連携といった仕事になると、書く量も実行時間も膨らんでいきます。

ActiveX(COM)── AutoCAD の外から動かす

Excel の VBA や、別に作ったアプリからAutoCAD を外部から操作する方法です。表計算のデータをそのまま作図する、といった他のソフトとの橋渡しに向いています。

ただし、プログラムは AutoCAD の外にいます。図形を 1 つ作るたびにプロセスの境界をまたぐため、数が増えると目に見えて遅くなります。マウスに図形を追従させるドラッグ配置(Jig)も使えません。

スクリプト・アクションレコーダー ── 手順の再生

コマンドの並びをそのまま書いたファイル(.scr)や、操作を録画して再生する仕組みです。決まった手順を繰り返すのには最適ですが、途中で計算したり、条件で分けたりはできません。「同じことを何度も」には強く、「図面の中身に応じて」には向きません。

.NET プラグイン ── AutoCAD の一部として動く

AutoCAD の内部に読み込まれ、AutoCAD の一部として動く方法です。図面のデータベースを直接読み書きするので速く、コマンドの定義、点や図形の選択、ドラッグ配置、寸法オブジェクトの生成——AutoCAD が持っている仕組みをそのまま使えます。

計算を伴う作図、確認申請で使う書類のような「正確さと体裁の両方が要る図面」に向いているのがこの方式です。当サイトのプラグインもこれで作っています。

方式向いていること
AutoLISP短い自動化、その場での手直し、社内に伝わる定型処理
ActiveX(COM)Excel など他のソフトとの連携
スクリプト・アクション決まった手順の繰り返し
.NET プラグイン計算を伴う作図、対話的な配置、図面の体裁を揃えた出力
どれが優れている、という話ではありません

数行で済むことに大掛かりな仕組みは要りませんし、逆に、面積を集計して表を組み、寸法を入れて、という仕事を手順の再生だけで済ませるのは無理があります。やりたいことの大きさに合った方法を選ぶ——それだけのことです。

プラグインは何が便利なのか

1. 毎回の手間が、コマンド 1 つに畳まれる

求積表を作る作業を思い浮かべてください。ポリラインの面積を拾い、三角形に割り、辺と高さを測り、丸めて、表を組んで、合計を出す。1 つ 1 つは難しくありませんが、部屋の数だけ繰り返すことになります。プラグインは、この繰り返しをまとめて引き受けます。

2. 図面から拾うので、写し間違いが起きない

電卓や表計算で計算して、答えを図面に書き込む——この経路には必ず「書き写す」工程が挟まります。プラグインは図面から直接読み取り、図面へ直接書き戻すので、その工程自体がありません。図面を修正したら、もう一度実行すれば済みます。

3. 図面の作りが揃う

人が描くと、文字の大きさも、画層も、寸法の付け方も少しずつ違ってきます。プログラムが描けばいつも同じです。担当者が変わっても、図面の見た目は変わりません。

4. 計算の根拠が図面に残る

答えの数値だけが書いてある図面は、後から確かめようがありません。算定式ごと図面に記載しておけば、審査でも社内の確認でも、その場で追えます。手で書き足すと面倒なことも、プログラムなら毎回きちんと書きます。

「速くなる」よりも、「間違えなくなる」ほうが効きます

時間の節約はもちろんですが、実務でありがたいのはやり直しに強くなることです。計画が変われば図面も変わります。そのたびに手計算をやり直すのか、コマンドをもう一度打つのか——差が出るのはここです。

どうやって入れて、どうやって使うのか

AutoCAD のプラグインには「バンドル」という決まった形があります。○○.bundle という名前のフォルダーで、中に本体(DLL)と、対応する AutoCAD のバージョンやコマンド名を書いた設定ファイルが入っています。

Saiko.bundle ├ PackageContents.xml 対応バージョンとコマンド名の宣言 └ Contents\ └ AcadPluginSaiko.dll プラグイン本体

このフォルダーを決められた場所へコピーするだけで導入は完了します。AutoCAD は起動時にこの場所を見に行き、対応するバージョンのものだけを読み込みます。

置き場所%APPDATA%\Autodesk\ApplicationPlugins\(そのユーザーだけ・管理者権限は不要
導入フォルダーをコピーする。当サイトの配布物では「インストール.bat」をダブルクリックするだけです
削除フォルダーを消すだけ。レジストリも他のファイルも触りません
使い方AutoCAD を起動し、コマンドラインにコマンド名を打つ
  1. ZIP ファイルを解凍するどこに解凍しても構いません。
  2. AutoCAD を終了する起動したままだとファイルが使用中で入れ替えられません。
  3. 「インストール.bat」をダブルクリックするバンドルが所定の場所へコピーされます。管理者権限は不要です。
  4. AutoCAD を起動する読み込みは自動です。何かを設定する必要はありません。
  5. コマンド名を打つあとはいつもの操作と同じ。点を指示したり、図形を選んだりして進みます。
なぜ「コピーするだけ」で動くのか

AutoCAD には、信頼できない場所にあるプログラムを読み込まないという安全のしくみがあります(システム変数 SECURELOAD)。手動で読み込む NETLOAD コマンドを使うと、置き場所によっては警告が出たり、読み込めなかったりします。

一方、上の ApplicationPlugins フォルダーはAutoCAD が最初から信頼している場所です。バンドル形式で配布されているプラグインが、面倒な設定なしに動くのはこのためです。

対応バージョンは、思っているより厳密です

AutoCAD のプラグインは、その版が使っている .NET のバージョンに合わせて作られています。合わないものは読み込まれずに無視されます(エラーにはならず、コマンドが増えないだけです)。

AutoCAD必要なランタイム
2022〜2024.NET Framework 4.8
2025 / 2026.NET 8
2027.NET 10

AutoCAD LT では動作しません。LT はプラグインを読み込む仕組み自体を持っていません(LT 2024 以降で AutoLISP には対応しています)。

ADA が配布しているプラグインについて

当サイト(ADA)では、建築の実務で繰り返し出てくる計算と作図を、コマンド 1 つに畳んだプラグインを配布しています。求積表、平均地盤面、日影の測定線、延焼ライン、採光補正係数——いずれも「計算して、その結果を図面に書く」という形の仕事です。

FEATURE 01

1 つの機能に 1 つのコマンド

メニュー画面を開いて選ぶのではなく、やりたいことの名前を直接打ちます。覚えるのはコマンド名だけです。

FEATURE 02

現在の画層へ、実寸で作図

画層を勝手に作ったり、図面の設定を変えたりしません。作図したい画層を現在の画層にしてから実行すれば、そのまま収まります。

FEATURE 03

日本語が化けない文字スタイル

専用の文字スタイル(MS ゴシック)を自動で用意します。算定式の ×、丸数字も正しく出ます。

もう一つの特徴が、入力画面の作りです。上の図の「ADA のプラグイン」で示したとおり、水平距離や用途地域といった設定は、これまでお使いいただいてきた入力画面をそのまま開いて受け取ります。プラグインが受け取るのは入力の結果だけで、作図は AutoCAD の中で行います。

おかげで、操作を覚え直す必要がありません。画面の並びも、前回値の記憶も、これまでどおりです。それでいて、作図されるものは AutoCAD の図形——実寸の線・円・文字として、図面にそのまま乗ります。

無償で配布しています

いずれも無償です。配布物は ZIP 1 つで、プラグイン(バンドル)と本体アプリのフォルダーが入っています。プラグインは決まった場所へ、本体アプリは好きな場所へ置いてください(場所はプラグインが自動で探します)。

配布中のプラグイン

コマンドできること記事
TESURIAPP手摺の強度計算と、断面図・立面図の作図JG_手摺強度計算
MENSEKIポリラインから求積図と求積表を作成JG_床面積表
SANSYA敷地を三角形に分割して三斜求積図・求積表JG_三斜求積
KISEKI車両の回転軌跡を、見ながらドラッグして配置JG_車両軌跡
KUKAKU交差した単線から、閉じたポリラインを一括作成JG_一括面積
EXTABLEExcel の表を、罫線は線分・文字は文字要素に変換JG_Excel表変換
JIBAN平均地盤面の算定と、展開図・算定表の作図JG_地盤面算定
HEIKINCH平均天井高の算定と、アイソメ図・断面図・算定表JG_平均天井高
KOUZAISEC形鋼・鋼管の断面を、規格から選んで作図JG_鉄骨断面図
SOKUTEISEN日影規制のみなし境界線と 5m・10m 測定線JG_日影測定線
WORDINWord の文章と表を、書式そのままに図面へJG_Word文変換
KOUTAI壁面後退線の作図JG_壁面後退線
ENSYOUB外壁間の中心線・延焼ライン・告示 197 号の緩和JG_延焼線緩和
SAIKOU採光補正係数の算定式と、補正係数目盛の作図JG_採光補正

コマンド名の末尾に PATH が付くもの(SAIKOUPATH など)は、本体アプリの場所を指定し直すための設定用コマンドです。ふだんは使いません。

使い始めるときに、知っておくと安心なこと

間違えたら戻せますかはい。作図された図形は通常の UNDO で取り消せます。手で描いた線と同じ扱いです。
図面の設定を変えられませんか作図に必要な文字スタイルや線種を用意することはありますが、現在の画層・現在の設定はそのままです。図面全体の体裁を書き換えることはありません。
作図された図形は特別なものですかいいえ。線・円・文字・寸法といった、AutoCAD の通常の図形です。あとから移動・複写・編集できますし、プラグインが入っていない環境でも問題なく開けます。
バージョンが違うとどうなりますか読み込まれないだけで、害はありません。入れたままでも AutoCAD の動作に影響しません。
コマンドが見つからないときはAutoCAD のバージョンをご確認ください。また、インストール.bat は AutoCAD を終了した状態で実行してください(起動中はファイルの入れ替えができません)。