日影測定線を掘り下げる

「JG_日影測定線」と日影図の測定線について

今回は「JG_日影測定線」に関連して、**日影図における測定線**についてわかりやすく整理します。

日影図の測定線は、閉鎖方式で作図する場合でも、敷地の形や道路の形が複雑だと、建築基準法の解釈によって結果が変わることがあります。

📏 測定線はどう作るの?

一般的に測定線は、次の考え方で設定されます。

敷地境界線に対して

  • 外側に5m または 10m 離れた点を結んだ線

ただし

🤔 境界線が曲がっているとき(凸角・凹角)

境界線が曲がっている場所(凸角・凹角)では、どこまでを測定線にすべきか迷います。

そんなときは、次のイメージが役立ちます。

境界線に沿って

  • 半径5mまたは10mの円を転がす

すると、その円の軌跡(通った跡)がまさに測定線になります。

1. 測定線は「連続した閉じた領域」になる

ここまでの考え方を基本にすると、日影図の測定線は 常に連続して閉じた領域 を作るようになります。

2. ジグザグ境界の「測定線」:大きさの違う円弧が連続する

敷地境界線がジグザク状に折れ、入隅(いりすみ)と出隅(ですみ)が交互に出てくるケースがあります。

  • この場合、5m・10mの測定線が円弧を伴って連続します。

また、

  • その円弧は 大小さまざまになります

(境界の凸凹に応じて”円を転がした軌跡”が変化するためです)

JG_日影測定線 ジグザグ状の境界線と5m及び10mの測定線

3. 円弧がクロス(交差)する場合は「内側が消える」

凹地の形によっては、円弧同士が 交差(クロス)することがあります。

このときは

  • 交差した点の内側にある軌跡は消去されます。

凹地部分の測定線1:円弧どうしがクロスする場合(イ図)

円弧と直線がクロスする場合も同様に

  • 交差した点の内側にある軌跡は消去されます。

凹地部分の測定線2:円弧と直線がクロスする場合(ロ図)

4. 道路の“みなし境界線”では解釈差が出やすい

道路側については”みなし境界線”(道路などの場合は境界線を実際の境界より外側に設定できる)となりますが、道路形状が複雑になると

  • みなし境界線の位置(道路中心線との関係)
  • みなし境界線の形状(枝分かれや延伸の扱い)

が 法令解釈・運用により変化します。
以下は、その際に特に論点となる部分です。

道路幅員の取り方

5. 道路幅員の取り方:「反対側の境界線」に垂線を引くのが合理的

  • 敷地境界線や道路中心線に対して垂線を引くよりも
  • 道路の反対側の境界線に対して垂線を引いて測る

ほうが測定線を考える場合は合理的です。

理由
  • 後で述べるようにそもそも道路中心線というものの定義があいまい
  • 測定線や道路斜線などの規制線を考える場合は反対側境界線が基準線になる

ためですが、もうひとつ測定線固有の理由があります。

道路幅員が10m未満の「みなし境界線」(A図)

道路の反対側の境界線が敷地境界線と平行ではない場合(八の字状道路の場合)を考えます。

5-1. 道路幅員が10m未満のとき

  • 法的には「みなし境界線」は道路幅員の1/2となっていますので、両端の垂線の中点を結ぶことで「みなし境界線」がつくれます(A図)。このときに、垂線が敷地境界線に垂直であっても反対側境界線に垂直であっても大きな違いはありません。
    また、角度の二等分線として設定した道路中心線とイコールにしても大差はありません。
道路幅員が10m以上の場合の「みなし境界線」(B図)

5-2. 道路幅員が10m以上になるとき

次に、道路幅員が徐々に広がっていき幅員が10m以上になるとどうでしょうか。

  • そこから敷地側に5m寄ったラインが「みなし境界線」になります。

みなし境界線は、幅員が10m未満までは道路中心線に重なり、10m以上で敷地の反対側に枝分かれしていきます。

5-3. ポイント(B図の◎部分)

B図の◎の位置に着目すると

  • 反対側の境界線から垂直に線を引き敷地境界線に下ろした線分の中点
  • みなし境界線が枝分かれする点

完全に一致します。つまり

  • 道路反対側の境界線に垂線を取ると整合しやすい

ということになり、前述の「幅員は道路の反対側の境界線に対して垂線を引いて測る」ほうがよいという考えが裏付けられます。

補足

前述したように、厳密には道路中心線=みなし境界線ではありません。
そもそも、八の字状の道路など道路幅員が一定ではない道路の中心線の引き方については明確なルールはありません
ただ一般的には角度の二等分線を複数引いて、それらを連結することで不整形道路の中心線としていることが多いように思います。

6. クランク状道路(曲がり方が複雑な道路)では特定が難しい

次に「みなし境界線」が作りにくい道路として、クランク状のものを扱います。

反対側の境界線の一部に敷地境界線に直角に近いラインがある場合(G図)

6-1. “かぎ型”に近い境界:反対側から5mが基準になる場合

道路反対側の境界線が折れてその部分の幅員が10mを超えるような場合(G図)は、

  • みなし境界線はその幅員の中心ではなく
  • 10m超えのルールから、反対側の境界線から5mの位置

になります。

ただしこのとき、

  • 5m測定線そのものは出隅の処理(円弧処理)で消えてしまい(ロ図参照)
  • 見かけ上の測定線という扱いになります。

また10m測定線でも同様に、出隅処理の影響を受けます。

(出隅を円弧にしない場合もあるかと思いますが、「JG_日影測定線」では出隅部を常に円弧とすることで処理を統一しています。)

幅員の異なる道路が雁行する場合の「みなし境界線」と測定線 解法1(H図)

6-2. “完全なかぎ型”になる場合も考え方は同様

H図のように反対側の境界が完全に垂直(かぎ型)になるケース(雁行道路と呼ばれる)でも、基本的な考え方として

  • 反対側の境界線から5mの位置をみなし境界線とする

という整理になります。

幅員の異なる道路が雁行する場合の「みなし境界線」と測定線 解法2(I図)

6-3.別解(行政の手引書にある解法)もあるが、万能ではない

雁行道路のような形では、

  • 幅員が切り替わる場所が「みなし境界線」になる
  • 出隅部は円弧処理しない

という考え方で手引書などで解説されている場合があります。

ただしこの方法は、

  • 境界が傾いている(G図のように崩れている)ケースには
  • 十分な解決にならない

という課題があります。

敷地境界線の一部が道路の反対側のラインに対して直角に近い場合(J図)

6-4.雁行している側が敷地の場合:「みなし境界線」も雁行する

雁行している側が敷地になる(J図)場合でも、本ツールでは

  • 道路の反対側の境界線の垂線の「中点」をつないで、みなし境界線を設定します。

なお、完全なかぎ型(K図)の場合

  • みなし境界線は敷地形状と同じ雁行形状となり結果がI図と同様になる

という特徴あります(ただし測定線の形は一貫して円弧になります)。

敷地境界線の一部が道路の反対側のラインに対して垂直な場合(k図)

6-5.整理

ここまでの整理から、本ツールの解法にはある程度の一貫性があると思いますが、すべての特定行政庁で受け入れられるかは、

  • ケースによって変わる可能性があるので注意が必要です。

7. 道路の“みなし境界線”と隣地境界線の結合方法には2通りある

次に残る課題として、

  • 道路の「みなし境界線」と
  • 隣地境界線

の 結合方法に関するものがあります。

こちらも実務の状況により2通りの解法が存在しています。

  • 方法①:隣地境界線を道路側の範囲まで延長して閉じる
  • 方法②:道路に垂直な“みなし境界線”を介して閉じる

隣地境界線と「みなし境界線」の結合方法①(L図)

L図は、隣地境界線を道路側の範囲まで延長して閉じる方法です。

自治体が配布している手引書に多い方法です。

隣地境界線と「みなし境界線」の結合方法②(M図)

M図は、道路に垂直なみなし境界線を介して閉じる方法です。

逆日影ソフトなどで採用していることが多い方法です。

「JG_日影測定線」(Ver.1.1以降)はどちらの方法も選択できます。
道路際が隅切状の時に結合方法①を採用した場合(N図)

7-1. 隅切り状に道路と接する場合:結合方法①だと何が起きるか ⚠️

結合方法①(L図)=「隣地境界線を道路みなし境界線まで延長して閉じる」方法で、
道路際が隅切りのように道路と斜めに取り合う状況を扱うと、みなし境界線ばかりではなく、測定線も道路に大きく入り込んできて、N図のように

  • 著しく不利な状況が発生します

8. 発散方式の解法:公の説明はあるが、複雑な道路には課題が残る

発散方式の解法については、東京都安全条例の解説に説明があります。
ただし、実務の複雑なケースに踏み込む部分が限定的で、次のような課題が残ります。

  • 屈曲道路の場合(角地など)
  • 交差点(複数道路の合流・取付)

これらについては解説が薄く、結果として解法は定まっていません

道路内に測定線を生まない発散方式の特徴(P図)

8-1.発散方式の八の字状道路への準用

発散方式で測定線を描画するとP図のようになります。先のB図と違い

  • 道路内には測定線が一切発生しません

因み東京都安全条例の解説には、発散方式は道路内を一律緩和する目的で設定されていると取れる記載があります。

屈曲道路の場合の発散測定線(Q 図)

8-2. 屈曲道路の扱い:判断が分かれる

前面道路に直交道路がある場合(Q図)では二通りの方法が考えられます。

  • 方法①:発散方式で作成した測定線を相互に交わらせる方法
  • 方法②:閉鎖方式を採用して円弧にする方法

Q図をみると分かるように、発散方式で屈曲道路を解こうとすると、測定線もみなし境界線も歪みのある形状となります。
これをきらって閉鎖方式を採用すると、道路に測定線の一部がかかり、P図でみたような一貫性が崩れてしまいます。

(注意:閉鎖方式と発散方式の併用は認められない場合があります。)

敷地境界線に直交する道路がある場合の発散測定線(R図)

8-3. 前面道路に直交する道路:こちらも判断が分かれる

R図のように前面道路に直交する道路がある場合です。

まず、この直行道路に発散方式を採用すると、敷地と直行する測定線になってしまい論外です。

だからといって道路内を全て緩和することができるでしょうか?
道路斜線制限などでは街区を整えるため「みなし道路境界線」を敷地の反対側に設定しますが、この考え方を準用すると、R 図のように測定線を直交道路で分断させずに連続させるのが正解のように思います。

道路内でも規制がかかる場合がある発散方式(S図)

8-3. (特殊な例)鈍角取り合いを道路内でも延伸扱いする運用

敷地境界線が道路に鈍角で取り合う場合(S図)に、

  • 道路内であっても敷地側の測定線を隣地境界線に直角なラインまで延伸して
  • 閉鎖方式との違いを縮める
    方策をとる行政庁があります。

これは、道路内における発散方向の無制限緩和を抑制する考え方で、閉鎖方式・発散方式の 折衷 として理解できます。

🧩結び

以上より、JG_日影測定線の作図は、円弧処理や閉領域の形成という基本原理に加えて、道路際の取扱い(結合方法・隅切り・発散方式の適用)によって結果の見え方が変わることがあります。
特に道路形状が複雑な場合(雁行・屈曲・交差点・隅切り等)には、手引・解説の原則だけでは解釈のブレが生じやすく、想定と異なる形状になる可能性も否定できません。
そのため、提出前に「どの方式をどこまで適用するか」と「判断基準(どこまでを道路側として扱うか等)」を整理し、必要に応じて行政の運用や提出実績と照らして確認することが望ましいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です